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前回、「あしひきの」考: 下二段・上二段両用活用に見える動詞についてにおいて、動詞の連用形は -e がついた形式で、転成名詞形は -i がついた形式というように、元来は別形だったのでは? という仮説を述べた。
正直、自分でも突拍子もない奇説だと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。
11/2802或本歌曰「あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む(足日木乃 山鳥之尾乃 四垂尾乃 長永夜乎 一鴨将宿)」
小倉百人一首にも柿本人麻呂作として収録されている有名な歌。
「あしひきの」は「山」等にかかる枕詞だが、びっくりすることに「あしひきの」の「き」は乙類キ(足日木乃)である。
一字一音式に書かれたものを見ても
15/3655「今よりは 秋づきぬらし あしひきの(安思比奇能) 山松蔭に ひぐらし鳴きぬ」
で、やはり乙類キ。