2020年7月25日土曜日

寛政暦の暦法 (5) 月離 (2) 最高実行、初均


前回
は、月の黄経の不等項: 一平均・二平均・三平均、遠地点黄経の不等項: 最高平均、昇交点黄経の不等項: 正交平均について説明した。今回は、いよいよ月の黄経における最大の不等項である初均(中心差)についてである。が、その前に、遠地点黄経(最高)の真黄経「最高実行」を求める必要がある。

今回のメニュー
  • 月の遠地点の真黄経(最高実行)、および、月の真の離心率(本天心距地)を求める。
  • 月の中心差(初均)を求める。
  • 月の不等項のうち、中心差に次ぐ大きな不等項「出差」の寛政暦における取り扱いについて

月の本当の真黄経を求めるには、あと、二均、三均、末均と、白経(白道上の経度)から黄経(黄道上の経度)への変換(升度差)が必要。月離はまだまだ続きます。

2020年7月18日土曜日

寛政暦の暦法 (4) 月離 (1) 平行、平均


前回
までで寛政暦の日躔(太陽の運行)の説明が終わり、今回からは、寛政暦の月離(月の運行)について説明する。

貞享暦・宝暦暦の月離における運行遅速要素は、「月行遅速」すなわち月の中心差であった。
一般に、中心天体と周回天体の二体しかない場合、周回天体は正確にケプラーの法則に従って運行するので、運行遅速要素は中心差のみとなる。しかし、そこに他の天体が加わると、ケプラーの法則からのずれが生じる。
太陽の運行(地動説に従えば実際は地球の運行なのだが)においては、他の天体(月や惑星)の影響はあまり大きくないので、中心差だけで計算してもさほどの誤差にはならない(よって寛政暦の日躔では中心差しか計算していない)が、月の場合は、中心天体(地球)と周回天体(月)に加え、無視できない影響を及ぼす第三の天体が加わる。太陽である。太陽の影響によって月の運行は極めて複雑になり、ある程度正確に計算するためには多数の補正項を加味しないといけない。

寛政暦の月離においては、太陰平行(月の平均黄経)に、一平均(年差)、二平均(ニュートンが「半年差」と呼んでいる補正項に相当?)、三平均(ニュートンが「第二の半年差」と呼んでいる補正項に相当?)、初均(中心差、および出差?)、二均(二均差)、三均(ニュートンが「第二の中心差」と呼んでいる補正項に相当?)、末均(月角差?)、および、升度差(白経(白道上の経度)から黄経への変換差、つまり、道差)を加味し、太陰黄道実行(月の真黄経)を得る。

今回説明するのは、平行、一平均、二平均、三平均まで。

2020年7月11日土曜日

寛政暦の暦法 (3) 日躔 (3) 黄赤・地平座標変換、時差総、日出入・晨昏分


前回
、寛政暦における太陽の実行(真黄経)の算出、定気日時(平均太陽時)の算出までを説明した。今回は、
  1. 黄道→赤道座標変換
  2. 平均太陽時と真太陽時の時差「時差総」
  3. (ご参考)赤道座標系から地平座標系への変換
  4. 日出入時刻
  5. 夜明け・日暮れ時刻(晨昏時刻)
  6. 寛政暦頒暦記載の昼夜刻との突合
について説明する。

2020年7月4日土曜日

寛政暦の暦法 (2) 日躔 (2) ケプラーの法則と均数、実行、定気日時


前回
は、寛政暦における日躔(太陽の運行)について、平気の節気、および、平均要素(太陽の平均黄経(平行)、平均近点黄経(最卑平行)、および、平均近点角(引数)の算出まで説明した。

今回は、中心差(均数)、および、真黄経(実行)の算出について。
寛政暦での中心差の算出は、ケプラーの楕円軌道モデルに依っているので、ケプラーの法則(特に、第二法則(面積速度一定の法則))についても併せて説明する。