前回までのところで、日月食関連を除き、江戸時代の幕府天文方による暦(貞享暦・宝暦暦・寛政暦・天保暦)の暦法の説明が完了した。
今回は、明治の新暦改暦以降における「旧暦」について少し話しておくこととする。
前回までのところで、日月食関連を除き、江戸時代の幕府天文方による暦(貞享暦・宝暦暦・寛政暦・天保暦)の暦法の説明が完了した。
今回は、明治の新暦改暦以降における「旧暦」について少し話しておくこととする。
前回は、月の地半径差(地平視差 horizontal parallax)の計算を行った。
今回は、月出入時刻の計算について。寛政暦の月出入時刻の計算と比べて、天保暦の計算は、こんなに無駄に壮大な計算式である必要があるのか?と思うほど長ったらしい。長ったらしいが、複雑で理解が困難な箇所はそうは多くないので、ちゃんとステップを追っていけば大丈夫。
長ったらしくなっている要素として、ひとつは、京都以外の地点における月出入時刻算出を割とちゃんとやっていること、もうひとつは、地半径差(地平視差)の考慮をしていることである。地平視差は、地球に近い天体ほど大きく、月では最大 1° 程度の視差となる。そして、天体が地平線付近にあるときに視差が最大となるから、月出入時は、まるまる約 1° の視差が発生することになり、月出入時刻算出にあたって、無視できない効果をもたらすのである。
というように、長ったらしくなっているもっともな理由もある。……が、単に「無駄に長ったらしいんじゃないの?」と思うところもなくはない。
前回までのところで月の黄経の算出が完了した。今回は月の黄緯の算出について。
寛政暦での月の黄緯は、月の昇交点離角 \(F\) と、軌道傾斜角 \(i\)
に基づいて、月の緯度 \(\beta\) は、\(\sin \beta = \sin i \sin F\)
を算出するだけだったが、天保暦では、黄緯についても種々の不等項を置いて算出している。