2021年2月28日日曜日

寛政暦の月食法 (4) 方向角 (2)

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前回に引き続き、初虧初虧・復円時の方向角の算出について。 

方向角は、下記の角度を総計したものとして算出することが出来るが、前回は「1. 赤経高弧交角」「2. 黄道赤経交角」の説明まで終わった。

  1. 赤経高弧交角
    (月/地球影が乗っている赤経線方向が、天頂方向となす角)
  2. 黄道赤経交角
    (黄道が、月/地球影が乗っている赤経線方向となす角)
  3. 黄道交実緯角
    (食甚時の月と地球影とを結ぶ方向が、黄道となす角)
  4. 併径交実緯角
    (初虧・復円時の月と地球影とを結ぶ方向が、食甚時の月と地球影とを結ぶ方向となす角)

今回は、「3. 黄道交実緯角」「4. 併径交実緯角」の算出を行い、初虧・復円時における方向角を求める。

また、食甚・食既(皆既のはじめ)・生光(皆既のおわり)、帯出入時の方向角についても述べる。

2021年2月21日日曜日

水路部式で太陽黄経・月黄経を計算し、朔弦望・二十四節気を求める

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自分で旧暦の作暦をしようという人のために、水路部式を使用して太陽黄経・月黄経を算出する方法を簡単に記載しておく。

水路部式は、海上保安庁水路部(当時。2002年以降、海上保安庁海洋情報部)が発行する「天測暦」の昭和53 (1978) ~ 55 (1980) 年版の付録として掲載された、コンピュータや関数電卓等を使って太陽・月・惑星の座標を略算する式である。もともと略算式だし、すでに使用を想定した期間を過ぎて賞味期限切れ気味、決して高い精度の式ではないが、お手軽に実装できる。

水路部式には、日月だけでなく惑星の座標の式も掲載されているし、日月についても黄経だけでなく、黄緯、地平視差を算出する式も掲載されているが、今回ご紹介するのは旧暦の作暦に必要なものだけ。日月の黄経の算出式。 

また、水路部式は賞味期限切れ気味なので、同じくらいお手軽に使えて、今でも実用に耐えそうな計算式の試案をでっちあげてみた。 付録として付記する。

2021年2月20日土曜日

寛政暦の月食法 (3) 方向角 (1)

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寛政暦の月食法の説明の続き。

前回までのところで、食甚・初虧・復円・食既・生光の各時刻の算出、食甚食分・出入時食分の算出まで説明し終わった。今回は、方向角の算出を行う。 

方向角とはなにかというと、月輪のうち、かけはじめる箇所の方向、最後までかけ残っている箇所の方向を示すもの。これは、月から見て地球影がある方向であると言える。寛政暦・天保暦の日月食記事においては、天頂方向を「上」、天底方向を「下」とする上下左右十六方位で示される。

  • ちなみに、現在の暦要項の日月食記事においては、天頂方向を 0° とし、反時計回り(左が 90°、下が 180°、右が 270°)の角度で示されている。

貞享暦・宝暦暦においては、かなり簡易的・定性的に求めているため正確なものではないが、概ね黄道北極方向を北とするような東西南北八方位で示されていた。 日月食を見る人にとって見れば、黄道北極方向がどっちかなんてわからない (※) ので、随分と不親切な記載方法である。

  • (※) 赤道北極ならまだ「北極星のあるほう」でわかるだろうが、黄道北極ベースで言われてもねえ。南中ごろだと「北」はだいたい上の方なのかなあ、月出/日出ごろだと「北」は左上の方なのかなあ、なんてイメージがわかるぐらい? ちなみに、黄道北極は、りゅう座のキャッツアイ星雲 (NGC6543) 付近にあるらしい。知らないですよね、そんなの。

寛政暦・天保暦では、頒暦の日月食記事の記載では「上の方」「上の左」「上と左の間」などの十六方位で記載されている。だいぶわかりやすい記載方法になった。「上の方」のような書きぶりから大雑把な計算なのかと思われるかもしれないが、実際はきっちり定量的に求めていて、かなり大変な計算の結果求められている。方向角は、下記の角度を総計したものとして算出することが出来る。

  1. 赤経高弧交角
    (月/地球影が乗っている赤経線方向が、天頂方向となす角)
  2. 黄道赤経交角
    (黄道が、月/地球影が乗っている赤経線方向となす角)
  3. 黄道交実緯角
    (食甚時の月と地球影とを結ぶ方向が、黄道となす角)
  4. 併径交実緯角
    (初虧・復円時の月と地球影とを結ぶ方向が、食甚時の月と地球影とを結ぶ方向となす角)

今回は、「1. 赤経高弧交角」「2. 黄道赤経交角」の算出まで。以降は次回に回す。

2021年2月13日土曜日

寛政暦の月食法 (2) 食甚食分、初虧復円時刻、出入時食分

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寛政暦の月食法の続き。前回は、望時刻・食甚時刻の算出までを説明した。今回は、食甚食分、各種時刻(初虧・復円・食既・生光)、帯食の出入時食分の算出まで。

2021年2月6日土曜日

寛政暦の月食法 (1) 実望、食甚時刻

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前回までのところで、宝暦暦における日月食法の説明が完了した。今回から寛政暦の日月食法についての説明を始める。

まずは月食法から。今回は、食甚時刻を求めるところまで。