2016年8月21日日曜日

Japan Knowledge

院政期アクセントが検索できるサイトとかないものかなーといろいろ物色していたが、結局のところ、小学館日本国語大辞典を見るしかなかろうとの結論に至る。

日本国語大辞典と言えば、14巻本で税別210,000円也。気軽に買える値段ではないし、置く場所もばかにならない。「精選版日本国語大辞典」だと3巻本で税別15,000円。こちらだとまだ手が出なくもないが、残念ながら、アクセント・上代特殊仮名遣表記など、私の知りたい情報が入っていないようである。

電子辞書だと、CASIO XD-Y20000 が精選版日本国語大辞典を収録しているが、さすがにフル版の日本国語大辞典を収録している電子辞書はないようだ。

というわけで、 Japan Knowledge。小学館の子会社の NetAdvance が運営しているサイトで、有料ながら、日本国語大辞典をはじめとする百科、国語、漢和、英英・英和・和英、他の辞書をオンライン検索できるというサイトである。
個人向けサービスは、1,620円/月(税込)、または、16,200円/年。(専門辞書系なども含めて検索できる +R の場合、2,160円/月 or 21,600円/年)
まあ、払えない金額ではないので、加入してみた。

 

 「語のアクセントを調べる」という用途に関していえば大いに満足。現代標準語・京都アクセントに加えて、歴史的なアクセント変化もわかる限り書いてある。

例えば、第3類のアクセントを示す動詞である「隠す」の記載をみると、
標準語: LHL
史的: 平安 LHL / LLF → 鎌倉 LLH / LHH か → 室町 LHH → 江戸 HLL
京都: 低平板 (LLH or LLL-H)
(記載方法は違うが、要するにそういう情報が示されている)
院政期時点、第二類(普通の低起式)LLF と、第三類 LHL で揺れがあったようだというのがわかる。

上代特殊仮名遣は勿論掲載されているし、沖縄を含め方言語形が掲載されているのもありがたい。
さすが日本国語大辞典。納得の情報量。

辞書だけでなく、小学館新編日本古典文学全集、平凡社東洋文庫といった叢書類も閲覧・検索が可能。
古事記・日本書紀・風土記・万葉集などといった上代資料の検索が出来るのはありがたい。
(もちろん、上代だけでなく、中古~近世文学も収録されている)
古事記・日本書紀などは原文全文を掲載しているサイトは多々あるし、万葉集は山口大学の万葉集検索システムが大変便利に使える。が、風土記はあまりそういうのがなかった。Oxford Corpus of Old Japanese [OCOJ] で歌謡は参照できるが、歌謡だけだと文脈がわからない。

細かい話をすれば、続日本紀がない(東洋文庫には入っているが現代語訳なので私の用には役立たない)とか、、、日本古典「文学」全集に何を求めるというのかって話ですね。「新編」じゃない日本古典文学全集には日本書紀も入ってなかった模様。
琉球文学(おもろさうし、組踊とか)がないとか、、、「日本」古典文学全集に何を求めるというのかって話ですね。
まあ何でも見られるわけでもないけれど、大抵の日本古典文学がオンラインでいつでも全文検索できるのはとても便利。

原文も現代語訳も注記もまとめて検索してくれるのだが、そんなにクレバーな検索ではなく、表記法も含めきっちりあってないとヒットしないので、見つけたいものを明確にイメージできるような検索じゃないとだめ。
例えば「難波津に咲くやこの花」で検索すると、あれやこれやの作品でいっぱいヒットし、その多くは注記で、古今集仮名序にある歌としての注釈が書いてあるのだが、古今集仮名序自体はヒットしない。
なぜなら、古今集仮名序にあるのは「難波津に咲くやの花」だから。

今、上代に存在した甲類オ段を洗い上げようとしていて、[OCOJ] の Lexicon から一つ一つ見ているが、その中で「usirwo ウシ」([OCOJ] の表記で wo は甲類オを意味する。私の書き方では usirô)というのがあった。用例は日本書紀歌謡120「水門の 潮の下り 海下り ウシモクレニ 置きてか行かむ」のみ。
「後ろ」なら乙類のはずなので、これ何?と思って、日本古典文学全集から検索。原文で検索するのが表記揺れの問題がないぶんヒットしやすかろうと思い、「于之盧母倶例尼」で検索するもヒットしない。なぜ? なんとか場所を特定し日本書紀歌謡120(巻第26 斉明紀)を見ると、しれっと「後ろも暗に」と訓じてある。どういうこと?
よくよく見ると、日本古典文学全集のテキストでは「于之廬母倶例尼」。
わかりますかね。「」字全体にマダレが乗っかって「」字になっている。「盧」は模韻 lo で甲類ロだが、「廬」は魚韻 liə で乙類ロ。
……本文校訂って、大変なんですね。。。

ついでにサイト内を色々と見ていたところ、東京女子大の「出身地鑑定!! 方言チャート」を見つけた。
なんか、これ前やったことがある。その時は「出身都道府県がわかる」だったのが、もう少し細かく出身地を特定できるようになったらしい。
やってみたところ、判定は「大阪府(摂津)」。
そう大きくはずれているわけじゃないが。。。神戸だから「兵庫県(摂津)」、または、神戸は兵庫県内摂津地域(いわゆる阪神間)の他地区と比べて、より播州弁的だから「兵庫県(播磨)」であるべき。
なんで、大阪だと判定されるのかを試してみたら、どうやら「林間学校のことを自然学校と言うか」 という質問に「いいえ」と答えると「大阪府(摂津)」判定に、「はい」と答えると正しく「兵庫県(摂津)」判定になるようだ。

「自然学校」?なんじゃそれ、と思ってググってみると、Wikipedia: 自然学校 (兵庫県)

自然学校(しぜんがっこう)とは、兵庫県の市町が県の補助を受けて行う県の学校行事(林間学校・臨海学校)である。1988年度から小学校で実験的に始まり、1990年度から1998年度までは希望する中学校、1991年度から公立の全小学校を対象に実施され現在に至る。

だそうだ。1991年とか、もう東京に行って神戸にはいなかったし。もちろん小学生じゃなかったし。
どうやら年齢がばれるトラップが仕掛けられていたらしい。

「している」を「しとう」とか、テヤ敬語とか、神戸方言の判定方法は他にもあると思うんですけどね。。。

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