2016年6月18日土曜日

現代日本語と上代日本語の自動詞他動詞ペア

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本編において、「自動詞他動詞ペアパターンのうち、規則的なパターンは、(自他、他自) × (四段A型、四段B型、四段C型、二段型、一段型)、対称型の11 (2×5+1) パターン!、他は全て例外!」としたのだが、規則的なパターンが全体の6割ぐらいしかありませんでした、では、説得力のカケラもない。
ゆえに、規則パターンが全体のどのくらいを占めるのかは検証しないといけないと思っていた。

現代日本語、上代日本語それぞれについて、有対動詞を抽出し、どの自動詞他動詞ペアパターンに該当するかをあてはめ、作成したのが下記の表である。具体的に抽出した自動詞他動詞ペアは、巻末に掲載している。



現代日本語の自動詞他動詞ペア分布

現代 自他 他自 無方向 自他 他自 無方向
正格 四段A型 59 44
103 14.80% 11.00%
25.80%
四段B型 22 10 32 5.50% 2.50% 8.00%
四段C型 4 22 26 1.00% 5.50% 6.50%
二段型 55 107 162 13.80% 26.80% 40.50%
下一/aす,aる -48 -107 -155 -12.00% -26.80% -38.80%
上一/oす -6
-6 -1.50%
-1.50%
上一/uす -1
-1 -0.30%
-0.30%
一段型 3 2 5 0.80% 0.50% 1.30%
対称型
26 26
6.50% 6.50%
自他同形 9 9 2.30% 2.30%
受身/使役 2 3
5 0.50% 0.80%
1.30%
小計 145 188 35 368 36.30% 47.00% 8.80% 92.00%
異例 上一段/aす 8

8 2.00%

2.00%

24 24
6.00% 6.00%
小計 8 0 24 32 2.00%
6.00% 8.00%
153 188 59 400 38.30% 47.00% 14.80% 100.00%
[JUMAN]での動詞総数 3,608語 のうち、400ペアを抽出。抽出率: 11.1%

上代日本語の自動詞他動詞ペア分布

上代 自他 他自 無方向 自他 他自 無方向
正格 四段A型 46 13
59 29.50% 8.30%
37.80%
四段B型 13 6 19 8.30% 3.80% 12.20%
四段C型 3 6 9 1.90% 3.80% 5.80%
二段型 19 18 38 12.20% 11.50% 23.70%
下二/aす,aる -10 -18 -28 -6.40% -11.50% -17.90%
上二/o乙す -6
-6 -3.80%
-3.80%
上二/uす,o甲す -3
-3 -1.90%
-1.90%
一段型 2 2 4 1.30% 1.30% 2.60%
対称型
17 17
10.80% 10.90%
受身形/使役形 3 2
5 1.90% 1.30%
3.20%
小計 86 47 17 150 55.10% 30.10% 10.80% 96.20%
異例 上二段/aす, aる 1 1
2 0.60% 0.60%
1.30%
その他
4 4
2.50% 2.60%
小計 1 1 4 6 0.60% 0.60% 2.50% 3.80%
87 48 21 156 55.80% 30.80% 13.40% 100.00%
[OCOJ]での動詞総数1,435語のうち、156ペアを抽出。抽出率: 10.9%

自動詞他動詞ペアの抽出率は、現代日本語・上代日本語とも約11%と、奇しくもというべきか、ほぼ同じである。

自動詞他動詞ペアの抽出作業は、下記のように行った。
  • 現代日本語の自動詞他動詞ペアは、京都大学の「日本語形態素解析システム JUMAN」[JUMAN] の辞書 (ContentW.dic) において、自他動詞・授受動詞・使役動詞の意味情報が付与されているものを自動詞他動詞ペアとした。
    • ただし、うち3例「掴める/掴まれる、泊めれる/泊まれる、戻せる/戻れる」は、「掴み/掴まり、泊め/泊まり、戻し/戻り」の自他動詞ペアの可能動詞同士のペアと考えるため、この分析からは除外した。
      (「泊めれる」ってラ抜き? [JUMAN] が語を抽出したコーパス上に用例があったんですかね…)
  • 上代日本語の自動詞他動詞ペアは、オックスフォード大学の "The Oxford Corpus of Old Japanese" [OCOJ] の辞書 (Lexicon) において、transitivity relationship と表示されているものを基礎としたが、これは、自動詞他動詞ペアに限らず同根動詞に対して幅広に表示されている傾向があるため、自動詞他動詞ペアかどうか、また、どれが自動詞でどれが他動詞かの判断は、実際の用例・古語辞典を参照しつつ筆者で判断した。
    また、transitivity relationship に関係語として掲載されているが、その語自体は Lexicon に掲載されていないもの ([OCOJ] が対象としている上代テキスト (歌謡、宣命) 中に用例がなかったものと思われる) についてはペア例から除外した。
    Transitivity relationship に記載されていないものは原則追加することはしないが、「見/見え」「射/射え」の2例は例外的に自動詞他動詞ペアとして追加した。
    [OCOJ] は、ローマ字表記のため、かな漢字化は筆者の判断で行っている。
    •  「見え」「射え」は、[OCOJ] においては、動詞として認定せず、上一段動詞に受身の助動詞 -ye- が膠着したものとしている。四段等に接続する受身の助動詞「え」(「ゆ/らゆ」の「ゆ」)と同一のものとみているわけである。
      一方、管見では、四段に接続する「え」は、「焼き→焼け→焼かし→焼かえ」のように三段重ねの自動詞化他動詞化によって成立した受身形と考えるのに対し、上一段に接続する「え」は一階の自動詞化であり、未然形+「え」という表面上の形式の類似にも関わらず、四段の場合とは異なり、他のペアと同様の自動詞他動詞ペアと考える。(上一段の受身形(自動詞化他動詞化を三段重ねした形式)は「見らえ(見られ)」である)
      よって、[OCOJ]での -ye- の用例のうち上一段に接続しているもの、「見え」「射え」を抽出して追加した。
  • 抽出作業の方式上、現代日本語の自他同形(開き、閉じ等)は抽出できたが、上代日本語の自他同形は抽出できていない。ただし、「閉ぢ」等、存在するのは確認している。

11の正格パターンに適合する自動詞他動詞ペアの割合、異例ペアの内容

正格率は、現代日本語 92.0%、上代日本語 96.2%と、ともに十分高いといえる。一安心である。
なお、以下については若干の変格ケースなるも、正格に含めている。
  • 四段B型、二段型のオ変格
    「aす、aる」ではなく「oす、oる」が現れているもの。
    現代語: 及び/及ぼし、滅び/滅ぼし、積み/積もり、温(ぬく)め/温もり
    上代語: 狂ひ/狂ほし、響(とよ)み/響もし、残(の)き/残(のこ)し、包(くく)み/包もり、積み/積もり、寄し/寄そり、籠め/籠もり、慰め/慰もり、寄せ/寄そり
    • 「寄し、寄せ/寄そり」以外はカハマ行であり、本編で述べた「オ変格はカガハバマ行に多い」ということが確認できる。
  • t変格、y変格
    他動詞についてsではなくt、自動詞についてrではなくyの子音が現れているもの。
    現代語: 絶ち/絶え、放ち/放れ、燃し/燃え、煮/煮え、見/見え、聞き/聞こえ
    上代語: 越し/越え、毀(こほ)ち/毀れ、放(はな)ち/離れ、射/射え、見/見え
    • 見て気がついたが、上代に「絶ち/絶え」が挙がっていない。どちらも上代に用例があり、[OCOJ] Lexicon の語意記載でも、tat-: cut, taye-: be cut off と、意味上でも他動詞自動詞関係にあるように思えるのだが transitivity relationship が何故かついていない。
    • ちなみに、現代語で「越し/越え」 があがっていないのは正しい。なぜなら、現代語では「越し」「越え」はどちらも自動詞、同義語だからである(車が坂を越える/越す)。上代においても大体は同様なのだが、書紀歌謡19「継ぎ上れる石群を手越しに越さば」のように「渡す」という意味の他動詞用法が存在するため、上代では自動詞他動詞ペアとしている。
  • 使役形(せ/させ)、受身形(れ/られ、え/らえ)の形式のもの。
    「負ひ/負ほせ(仰せ)」、「聞き/聞こえ」のオ変格ケースを含む。「負ひ/負ふせ」がちょっと微妙だが、正格に含めた。

正格率が特に優秀なのが上代日本語の96.2%である。長年の語形変化を経る時間が短かった分だろうか。
上代日本語で異例と認定した6例は、以下のとおりであるが、いずれも説明がつく事例だと考える。
「朽ち/朽たし」「留(とど)み/留まり」「消(け)/消ち」「消え/消ち」「匂へ/匂え」「分け/分かれ」
  •  「留(とど)み/留まり」は、他自二段型の「留め/留まり」について、「留め」が下二段・上二段の活用形揺れを起こしたものだろう。
  •  「匂へ/匂え」は、自他四段A型の「匂ひ/匂へ」に対して、別語形の自動詞「匂え」が並存しているため、「匂へ/匂え」のペアも、一応掲載しているのみである。
    「匂(に)ひ」という動詞があったと仮定して、「匂(にほ)ひ」は継続フが付いたもの、「匂(にほ)え」は受身形に由来するということも考えられよう。
  • 「分け/分かれ」は、本編でも記載したように、他自四段B型「分き/分かり」、他自二段型「分け/分かり」、対称型「分かち/分かり」、他自四段C型「分かち/分かれ」の多重対応であり、「分け/分かれ」のペアと考えた場合に異例に見えるに過ぎない。[OCOJ]でも、「分かち (wakat-)」を transitivity relationship として掲載しているのだが、用例がないためか、「分かち」を語として掲載していないため、自動詞他動詞ペアの抽出からは除外している。そのため、「分け/分かれ」のペアとして挙げざるを得ず、結果、異例になっているのである。
  •  「消(け)/消ち」「消え/消ち」については、以前書いた。本来は、「けち(けし)/けえ」の他自四段C型だったと考えている。
  • 残るは「朽ち/朽たし」だが、「留み、留め/留まり」のような確証はないものの、「朽ち」(上二段)が、下二段または四段から活用形ゆれを起こしたかで説明可能だろう。
「自動詞他動詞ペアの規則的パターンは11パターン」説は、少なくとも上代においては、ほぼ完璧に近く成立していると考える。

現代語の異例パターンについての説明は詳しくは省略するが、規則パターンからの語形・活用形揺れや、継続の助動詞「フ」の接続有無によるもの、「カス」「メル」など後世になって登場した他動詞化語尾によるものなど、説明が可能なものがほとんどだと思われる。
  • 「カス」型は、JUMAN上は「寝/寝かし、寝かせ」しか挙がっていないが、「甘え/甘やかし」「怖じ/脅し、脅かし」「怯え/脅(おびや)かし」など、かなりの造語力を見せている型であり、それ自体かなり興味深い存在である。
    • あ、「散り/散らし、散らかり/散らかし」も挙がっているか。
  • 継続「フ」の接続有無によるパターンについて、「潤ほひ/潤ほし」のように、自他四段B型「潤ひ/潤ほし」に綺麗に対応し、かつ「潤ひ」の語形も確認されているような説明しやすいものもあるのだが、他は必ずしもそうでもない。
    継続「フ」には不思議な挙動があって、フは四段活用のはずだが、「崇め、崇まへ」のように下二段活用の動詞につく時は下二段活用になることがある。その辺りも関係しているような気がする。(ex. 「つかまり/つかまえ」は、他自二段型「つかめ/つかまり」の、「つかめ」にフがついて「つかまへ」となったのではないかとも考えられる)
    この挙動については、またの機会にもう少し掘り下げたい。

四段B型、四段C型は実在したか

四段B型、四段C型については、実は少々胡散臭いと思っていた。
四段B型 (-i/-asi, -i/-ari) は、二段型 (-ë/-asi, -ë/-ari) からの基本動詞の活用形揺れ、受身形使役形 (-i/-ase, -i/-are) からの派生動詞の活用形揺れで発生し得ること、
四段C型 (-ri/-se, -si/-re) は、対称型 (-si/-ri) からの派生動詞の活用形揺れで発生し得ること、
から、本来的なパターンではなく、後世に二次的に発生した可能性もあると考えていたのだ。

過去の日本語に、「二母音連続は許容するが三母音連続は忌避し子音を挿入する」というルールがあったことの証拠とするには、四段A型、二段型、一段型(それぞれ子音語幹、短母音語幹、長母音語幹)があればよく、四段B型、四段C型は二次的な存在であっても別に構いはしない。

四段A型、二段型は圧倒的な数があって確実な存在だ。
ちなみに、上代語では自他四段A型が支配的で、現代語では他自二段型が支配的というのも興味深いところだ。「四段自動詞→下二段他動詞→四段自動詞」という派生の主系列があって、一層目まで進んだのが上代、二層目まで進んだのが現代、という感じだろうか。
一段型は絶対的な数は少ないかもしれないがそれはそもそも上一段動詞自体が少ないからであって、一段型の自動詞他動詞ペアの抽出率は、4ペア/[OCOJ]での上一段動詞総数13語 = 30.8% と、全体の10.9% と比べ活発に自動詞他動詞ペアを産出している語群と言え、それらが一つの例外もなく一段型に従っているのだから、これも否定できないだろう。

といったわけで、四段B型、四段C型は若干、眉に唾をつけておく必要があるかなと思っていたのだ。とはいえ、受身形(ゆ・らゆ形)、使役形(す・さす形)の成立のところでは、四段B型・四段C型の存在を前提として説を説いているので、二次的な存在であってもよいが、上代文献時代より前の段階で、ある程度の存在感で存在していてもらわないと困る。

結果から言うと、四段B型・四段C型ともに、上代時点 (四段B: 12.2%, 四段C: 5.8%) から現代 (四段B: 8.0%, 四段C: 6.3%) と遜色ない率で存在しており、後世に発生した訳ではないことがわかる。
  • ちなみに、[OCOJ]が挙げていない「絶ち/絶え」の一例を追加してよければ、上代の四段C型は6.4%だ。
ただし、
  • 基本形の活用形揺れで、四段A型/二段型に揺れているもの、
    「懸き、懸け/懸かり」「放き、放け/離かり」「留み、留め/留まり」「寄し、寄せ/寄そり」、
  • 派生形の活用形揺れで、対称型/四段C型に揺れているもの、
    「隠し/隠り、隠れ」「寄り/寄し、寄せ」、
等があるのも事実であり、「上代以前の段階で二次的に発生した」可能性はまだ残っている。

四段A型は子音終わり語幹に由来し、四段B型は短母音 i 終わり語幹に由来する、というのが本編での説なのだけれども、
  • 「靡き/靡け、靡かし」「匂ひ/匂へ、匂はし」 「響み/響め、響もし」「漬き/漬け、漬かし」「給ひ/給へ、賜り」
の、四段A型、四段B型両派生しているようなものをどう捉えるべきか。 どちらが片方が本来の派生で、他方が他の語からの類推派生か。基本形自体が子音終わりと短母音 i 終わりで揺れていたのか。
まだまだ、いろいろ考えるべき点はあるようだ。

現代日本語の自動詞他動詞ペア


自他 他自
四段A型 自動詞 -u (終止形), -i (連用形) / 他動詞 -eru, -e
赤らみ/赤らめ, 空(あ)き/空け, 開(あ)き/開け, 痛み/痛め, 浮かび/浮かべ, 思い-, 傾く/傾ける, 叶い/叶え, 絡み/絡め, 苦しみ/苦しめ, 沈み/沈め, 従い/従え, 退(しりぞ)き/退け, 竦(すく)み/竦め, 進み/進め, 窄(すぼ)み/窄め, 育ち/育て, 背(そむ)き/背け, 揃い/揃え,
たがい/たがえ, 建ち/建て, 立ち/立て, 泡-, 引き-, 役-, 違(ちが)い/違え, 縮み/縮め, 付き/付け, 色-, 片-, 活気-, 傷-, くっ-, 近-, 張り-, 巻き-, 結び-, 焼き-, 就き/就け, 点き/点け, 着き/着け, 落ち-, 続き/続け, どき/どけ, 届き/届け, 整い/整え, 調い/調え, 並び/並べ, のき/のけ, 入(はい)り/入(い)れ, 潜(ひそ)み/潜め, 引っ込み/引っ込め, 伏し/伏せ, 向き/向け, 振り-, 止(や)み/止め, 和らぎ/和らげ, 歪み/歪め, 緩み/緩め
他動詞 -u, -i / 自動詞 -eru, -e
売り/売れ, 折り/折れ, 欠き/欠け, 切り/切れ, 千-, 挫(くじ)き/挫け, 砕き/砕け, 削り/削れ, 裂き/裂け, 知り/知れ, 擦(す)り/擦れ, 添い/添え, 削(そ)ぎ/そげ, 炊き/炊け, 瞑(つぶ)り/瞑れ, つむり/瞑れ, 釣り/釣れ, 溶き/溶け, 執り/執れ, 捕り/捕れ, 採り/採れ, 摂り/摂れ, 撮り/撮れ, 抜き/抜け, 脱ぎ/脱げ, 捩(ね)じり/捩じれ, 練り/練れ, 剥(は)ぎ/剥げ, 弾(はじ)き/弾け, 引っ掻き/引っ掻け, 解(ほど)き/解け, 捲(まく)り/捲れ, 見て取り/見て取れ, 剥(む)き/剥け, 捲(めく)り/捲れ, もぎ/もげ, 揉み/揉め, 焼き/焼け, 破き/破け, 破(やぶ)り/敗れ, 破(やぶ)り/破れ, 捩(よじ)り/捩れ, 縒(よ)り/縒れ, 割り/割れ
四段B型 自動詞 -u, -i / 他動詞 -asu, -asi
合い/合わし, 動き/動かし, 及び/及ぼし, 乾き/乾かし, 凝り/凝らし, 空(す)き/空かし, 透き/透かし, 済み/済まし, 澄み/澄まし, 反り/反らし, 散り/散らし, 照り/照らし, 飛び/飛ばし, 吹き-, 鳴り/鳴らし, 励み/励まし, 減り/減らし, 擦り-, 滅び/滅ぼし, 漏り/漏らし, 揺るぎ/揺るがし, 沸き/沸かし
他動詞 -u, -i / 自動詞 -aru, -ari
組み合わし/組み合わさり, 包(くる)み/包まり, 刺し/刺さり, 突き-, 掴(つか)み/掴まり, 繋ぎ/繋がり, 積み/積もり, 挟み/挟まり, 塞(ふさ)ぎ/塞がり, 跨ぎ/跨がり
四段C型 自動詞 -ru, -ri / 他動詞 -seru, -se
被(かぶ)り/被せ, 乗り/乗せ, 載り/載せ, 寄り/寄せ
他動詞 -su, -si / 自動詞 -reru, -re
現わし/現れ, 表わし/表れ, 崩し/崩れ, 汚し/汚れ, 焦がし/焦がれ, 零(こぼ)し/零れ, 壊し/壊れ, 倒し/倒れ, 絶ち/絶え, 潰(つぶ)し/潰れ, 流し/流れ, 逃(のが)し/逃れ, 剥がし/剥がれ, 外し/外れ, 放し/放れ, 離し/離れ, 放ち/放れ, ほぐし/ほぐれ, 乱し/乱れ, 蒸し/蒸れ, 燃(も)し/燃え, 汚し/汚れ
二段型 自動詞 -eru, -e / 他動詞 -asu, -asi
明け/明かし, 荒れ/荒らし, 癒え/癒し, 遅れ/遅らし, 欠け/欠かし, 枯れ/枯らし, 切れ/切らし, 肥え/肥やし, 転(こ)け/転かし, 焦げ/焦がし, 転げ/転がし, 冷め/冷まし, 覚め/覚まし, 焦(じ)れ/焦らし, 透け/透かし, ずれ/ずらし, 逸(そ)れ/逸らし, 絶え/絶やし, 垂れ/垂らし, 費え/費やし, 出/出し, 突き-, 抜き-, 抜け-, 溶け/溶かし, 解け/解かし,
慣れ/慣らし, 煮え/煮やし, 逃げ/逃がし, 抜け/抜かし, 濡れ/濡らし, 生え/生やし, 剥げ/剥がし, 化け/化かし, 果て/果たし, 晴れ/晴らし, 腫れ/腫らし, ばれ/ばらし, 冷え/冷やし, 増え/増やし, 震え/震わし, ぼやけ/ぼやかし, 紛れ/紛らし, 負け/負かし, 蒸れ/蒸らし, 燃え/燃やし, 漏れ/漏らし, 揺れ/揺らし
自動詞 -iru, -i / 他動詞 -osu, -osi
起き/起こし, 落ち/落とし, 下り/下ろし, 降り/降ろし, 干(ひ)/干(ほ)し, 滅び/滅ぼし
自動詞 -iru, -i / 他動詞 -usu, -usi
尽き/尽くし
他動詞 -eru, -e / 自動詞 -aru, -ari
上げ/上がり, 繰り-, 仕-, 立ち-, 積み-, 巻き-, 持ち-, 盛り-, 挙げ/挙がり, 揚げ/揚がり, 預け/預かり(授受), 暖め/暖まり, 温め/温まり, 集め/集まり, 当て/当たり, 突き-, 改め/改まり, 合わせ/合わさり, 組み-, 植え/植わり, 薄め/薄まり, うずめ/うずまり, 埋め/埋まり, 終え/終わり, 収め/収まり, 治め/治まり, 納め/納まり,
代え/代わり, 変え/変わり, 換え/換わり, 置き-, 替え/替わり, 入れ-, 切り-, 掛け/掛かり, 突っ-, 引っ-, 重ね/重なり, 積み-, 固め/固まり, 被(かぶ)せ/被さり, 絡め/絡まり, 決め/決まり, 清め/清まり, 窮め/窮まり, 包(くる)め/包まり, 加え/加わり, 言付け/言付かり(授受), 下げ/下がり, 引き-, ぶら-,
授け/授かり(授受), 定め/定まり, 鎮め/鎮まり, 静め/静まり, 締め/締まり, 引き-, 閉め/閉まり, 据え/据わり, 窄(すぼ)め/窄まり, 狭(せば)め/狭まり, 備え/備わり, 染め/染まり, 高め/高まり, 助け/助かり, 溜(た)め/溜まり, 縮め/縮まり, 漬け/漬かり, 伝え/伝わり, 勤め/勤まり, 繋げ/繋がり, つぼめ/つぼまり, 詰め/詰まり, 煮-, 強め/強まり, 連ね/連なり, 遠ざけ/遠ざかり, 止どめ/止まり, 止(と)め/止まり, 泊め/泊まり,
 ぬくめ/ぬくまり, ぬくめ/温もり, 乗っけ/乗っかり, 始め/始まり, 嵌め/嵌まり, 当て-, 早め/早まり, 速め/速まり, 低め/低まり, 広げ/広がり, 広め/広まり, 深め/深まり, ぶつけ/ぶつかり, 隔て/隔たり, 曲げ/曲がり, 捩(ね)じ-, 交(まじ)え/交わり, 交ぜ/交ざり, 混ぜ/混ざり, 纏(まと)め/纏まり, 丸め/丸まり, 見付け/見付かり, 儲け/儲かり, 休め/休まり, 茹(ゆ)で/茹だり, 横たえ/横たわり, 弱め/弱まり
一段型 自動詞 -ru, - / 他動詞 -seru, -se
着/着せ(使役), 似/似せ, 見/見せ(使役)
他動詞 -ru, - / 自動詞 -eru, -e
煮/煮え, 見/見え
対称型 他動詞 -su, -si / 自動詞 -ru, -ri
余し/余り, 写し/写り, 興し/興り, 起こし/起こり, 巻き-, 帰し/帰り, 返し/返り, 引っ繰り-, 跳ね-, 覆(くつがえ)し/覆り, 転がし/転がり, 諭し/悟り, 足し/足り, 散らかし/散らかり, 通し/通り, 治し/治り, 直し/直り, 成し/成り, 濁し/濁り, 残し/残り, 浸(ひた)し/浸り, 翻(ひるがえ)し/翻り, 回し/回り, 戻し/戻り, 宿し/宿り, 渡し/渡り
自他同形 決し, 減じ(減じる), -(減ずる), 生じ(生じる), -(生ずる), 転じ(転じる), -(転ずる), 閉じ, 開き
受身形
使役形
自動詞 -u, -i / 他動詞 -aseru, -ase
済み/済ませ, 沸き/沸かせ
他動詞 -u, -i / 自動詞 -areru, -are
生み/生まれ, 産み/産まれ, 聞き/聞こえ
異例 自動詞 -iru, -i / 他動詞 -asu, -asi
(四段B亜種) 生き/生かし, 懲り/懲らし, 閉じ/閉ざし, 伸び/伸ばし, 延(の)び/延ばし, 満ち/満たし
(対称型亜種) 借り/貸し, 足り/足し
その他
(継続フ関連) うるおい/うるおし, つかまり/つかまえ, にぎわい/にぎわし, にぎわい/にぎわせ, まぎれ/まぎらわし
(カス型) 寝/寝かし, 寝/寝かせ
(メル型) 薄らぎ/薄め, 薄れ/薄め, 細り/細め, 弱り/弱め
(スル/ナル型) し/成り, 亡くし/亡くなり, 無くし/無くなり
(その他) 浴び/浴びせ, 遅れ/遅らせ, 教(おし)え/教(おそ)わり, 消し/消え, 懲り/懲らしめ, 震え/震わせ, 混ぜ/混じり, 交ぜ/交じり, 揺すり/揺れ, 分け/分かれ

※ これを作っていて気がつきましたけど、本編で、受身形(ゆ・らゆ形)・使役形(す・さす形)は「自動詞化→他動詞化→自動詞化」「他動詞化→自動詞化→他動詞化」の三段重ねの自動詞他動詞派生により生まれたという主張をしていますが、
他動詞「剥(は)ぎ」、自動詞「剥げ」、他動詞「剥がし」、自動詞「剥がれ」
は、綺麗に「剥ぎ」からその受身形「剥がれ」までの経路を残している言葉ですね。いい例、見つけた。

上代日本語の自動詞他動詞ペア


自他 他自
四段A型 自動詞 -u (終止形), -i (連用形) / 他動詞 -u, -ë
会ひ/合へ, 坐(いま)し/坐せ, 浮かび/浮かべ, 浮き/浮け, 傾き/傾け, 潜(かづ)き/潜け, 極み/極め, 沈(静)み/沈(静)め, 染(し)み/染め, 知り/知れ(使役), 進み/進め, 立ち/立て, 頼み/頼め(授受), 平らぎ/平らげ, 垂り/垂れ, 付き/付け, 漬き/漬け, 継ぎ/告げ, 伝(つた)ひ/伝へ, 続き/続け, 集(つ)ひ/集へ, 整ひ/整へ, 響(とよ)み/響め,
泣き/泣け, 慰み/慰め, 懐(なつ)き/懐け, 靡き/靡け, 並(な)み/並め, 並(なら)び/並べ, 匂ひ/匂へ, 佩き/佩け, 這ひ/延へ, 払ひ/祓へ(使役?), 伏し/伏せ, 触り/触れ, 隔ち/隔て, 紛(まが)ひ/紛へ, 罷(ま)き/罷け, 服(まつ)ひ/服へ, 満ち/満て, 向かひ/迎へ, 向き/向け, 持ち/持て(使役), 休み/休め, 止み/止め, 緩(ゆる)ひ/緩へ
他動詞 -u, -i / 自動詞 -u, -ë
送り/遅れ, 切り/切れ, 砕き/砕け, 裂き/裂け, 給ひ/給へ(授受), 使ひ/仕へ, 解き/解け, 引き/引け, 振り/振れ, 乱り/乱れ, 焼き/焼け, 破(やぶ)り/破れ, 割り/割れ
四段B型 自動詞 -u, -i / 他動詞 -asu, -asi
動(う)き/動かし, 交(か)ひ/交はし, 霧()り/霧らし, 狂ひ/狂ほし, 散り/散らし, 漬き/漬かし, 照り/照らし, 飛び/飛ばし, 響(とよ)み/響もし, 靡き/靡かし, 匂ひ/匂はし, 残(の)き/残(のこ)し, 惑(ま)ひ/惑はし
他動詞 -u, -i / 自動詞 -aru, -ari
懸き/懸かり, 包(くく)み/包もり, 放(さ)き/離かり, 給ひ/賜り(授受), 積み/積もり, 寄し/寄そり
四段C型 自動詞 -ru, -ri / 他動詞 -su, -se
上(のぼ)り/上せ, 乗り/乗せ, 寄り/寄せ
他動詞 -su, -si / 自動詞 -ru, -re
現し/現れ, 隠し/隠れ, 越()し/越え, 毀(こほ)ち/毀れ, 流し/流れ, 放(はな)ち/離れ
二段型 自動詞 -u, -ë / 他動詞 -asu, -asi
明け/明かし, 荒れ/荒らし, 出で/出だし, 暮れ/暮らし, 覚め/覚まし, 仕へ/遣はし, 濡れ/濡らし, ぬれ/ぬらし(ほどけ/ほどきの意味), 寝/寝(な)し, 栄(は)え/栄やし
自動詞 -u, -ï / 他動詞 -osu, -osi
起き/起こし, 落ち/落とし, 生ひ/生ほし, 降り/降ろし, 干/干し, 滅び/滅ぼし
自動詞 -u, -ï / 他動詞 -usu, -usi or -ôsu, -ôsi
過ぎ/過ぐし, 過ぎ/過し, 尽き/尽くし
他動詞 -u, -ë / 自動詞 -aru, -ari
上げ/上がり, 当て/当たり, 懸け/懸かり, 重ね/重なり, 変へ/変はり, 極(きは)め/極まり, 籠め/籠もり,
放(さ)け/離かり, 定め/定まり, 静め/静まり, 溜(た)め/溜まり, 留(とど)め/留まり, 止(と)め/止まり,
慰め/慰もり, 隔て/隔たり, 交(まじ)へ/交はり, 寄せ/寄そり, 終へ/終はり
一段型 自動詞 -ru, - / 他動詞 -su, -se
着/着せ(使役), 見/見せ(使役)
他動詞 -ru, - / 自動詞 -yu, -ye
射/射え, 見/見え
対称型 他動詞 -su, -si / 自動詞 -ru, -ri
明かし/赤り, 余し/余り, 致し/至り, 移し/移り, 落とし/劣り, 隠し/隠り, 貸し/借り, 返し/帰り, 下だし/降だり, 過ぐし/過ぐり, 通し/通り, 鳴し/鳴り, 為し/成り, 残し/残り, 廻ほし/廻ほり, 寄し/寄り, 渡し/渡り
自他同形 -
受身形
使役形
自動詞 -u, -i / 他動詞 -asu, -ase
負ひ/負ふせ, 負ひ/負ほせ, 嘆(な)き/嘆かせ
他動詞 -u, -i / 自動詞 -aru, -are
生み/生まれ, 分き/分かれ
異例 自動詞 -u, -ï / 他動詞 -asu, -asi
朽ち/朽たし
他動詞 -u, -ï / 自動詞 -aru, -ari
留(とど)み/留まり
その他
消()ち/消(), 消()ち/消え, 匂へ/匂え, 分け/分かれ
乙類イ、乙類エ、甲類オのかなの下にアンダーラインを引く。但し、下二段・上二段の活用語尾のような自明のものに対しては引かない。ローマ字表記部では、乙類イ、乙類エ、甲類オをそれぞれ、ï, ë, ô と表記し、甲類イ、甲類エ、乙類オを単に i, e, o と表記する。

 

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【参考文献】
[JUMAN] 京都大学大学院情報学研究科黒橋・川原研究室 「日本語形態素解析システム JUMAN」 Ver. 7.0.1, http://nlp.ist.i.kyoto-u.ac.jp/index.php?JUMAN retrieved: 2016-06-10
[OCOJ] Frellesvig, Bjarke; Horn, Stephen Wright; Russell, Kerri L; and Sells, Peter. "The Oxford Corpus of Old Japanese" http://vsarpj.orinst.ox.ac.uk/corpus/ retrieved: 2016-06-10
青木 博史 (1997) 「カス型動詞の派生」『国語学』第188集, pp.82-95 http://db3.ninjal.ac.jp/SJL/view.php?h_id=1880950820

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