動詞活用形の発生過程その1
① 連用形の成立
- 語根に -i を付加することにより、連用形が成立。
- -i,- ī 語根を連用形化する場合、もともと i で終わっているので i は付加しない。
- 長母音語根 (ī 以外) の場合、3母音連続を防ぐため、子音 (自動詞は r, 他動詞は s) が挿入された。
子音語根
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-a
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-o
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-u
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-i
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長母音
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書く
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有り
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出づ
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起く
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尽く
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見る
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来
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す
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往ぬ
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刺す
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移る/移す
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(最終的な活用形)
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四段
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ラ変
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下二段
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上二段
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上一段
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カ変
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サ変
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ナ変
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四段
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四段
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語根
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kak
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ār
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ida
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oko
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tuku
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mī
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ki
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si
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ini
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sasi
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utū
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連用
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kak-i
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ār-i
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ida-i
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oko-i
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tuku-i
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mī
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ki
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si
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ini
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sasi
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utū-r/s-i
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- 備考
- 単音節の -i 語根動詞は、「来」「し」(「往に」も単音節だったか)を除き、全て長母音であった。
- 「有り」の語根を、"ār" と長母音としているのは、下二段他動詞「得」から派生した他自二段形自動詞ではないかとのアイデアから。(ex. 「子を得る」/「子が有る」) 全然とんちんかんかも知れない
- 「刺す」を -i 語根、「移る」を長母音語根としているのは、他自四段B形(刺さる)、対称形(移す)の自他動詞対応があるため。前記のように、類推で作られた自他動詞対応かも知れず本当にそうだったかはわからない。例示の都合上、仮にそう置いているのみと理解されたい。
② 未然・終止形の成立
- 「連用形から末尾の -i を除去したもの」を新たな語根とし、-a, -u を付加することにより、未然形・終止形が成立。
- i/ī の連用形を持つ単音節語では (i を除去すると子音だけになってしまうので) 連用形がそのまま新たな語根に。
- 要するに、
- 連用形の i を a, u に変える。
- ただし、単音節語の短母音 i の連用形の場合、ia, iu。
- ナ変
- ini は、なぜか多音節語にも関わらず、inia, iniu となった。理由として下記の仮説が考えられる。
- ini は、この時点で単音節語 ni であり、その後、形式名詞「い」などが結合して、多音節語 ini になった。
- ini は、この時点で単音節語 *ɲi であり、その後、*ɲ > in という変化が起きて、多音節語 ini になった。
- なお、「死ぬ」は「死+往ぬ」からの複合語と考えておく。
- 上一段
- 上一段の終止形は、長母音語根に u を接続するため、子音 r が挿入された。(この時点では既に自動詞・他動詞による挿入子音の差はない)
- 一方、上一段の未然形については、mī-ra とならず、mia になった。
- おそらくこの時期、未然形のaは、動詞の活用語尾ではなく後接の助動詞の一部であり、同一語内の3母音連続ではないため、子音が挿入されなかったと考える(見む mī am-u)。その後、動詞との結合性が高まったときも、そこで子音を挿入するのではなく、ī-a > ia と、短母音の二母音連続にして解決したと思われる。
- ラ変
- 「有り」の終止形は、なぜか ār-u ではなく、ār-i に。
- 終止形形態素 -u の意味に関係しているのかも知れない。
- または、終止形の成立前は全ての動詞で連用形を終止用法にも使用していたと考えられるが、頻出語「有り」で保守的な形式が残存したか。
- 過去自動詞「き」、打消推量「じ」など、助動詞で i 終わりの終止形があるのと共通の原因を持つか。
連用
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kaki
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āri
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idai
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okoi
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tukui
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mī
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ki
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si
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ini
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sasi
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utūr/si
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再構成語根
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kak
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ār
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ida
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oko
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tuku
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mī
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ki
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si
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ini
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sas
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utūr/s
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未然
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kak-a
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ār-a
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ida-a
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oko-a
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tuku-a
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mi-a
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ki-a
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si-a
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ini-a
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sas-a
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utūr/s-a
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終止
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kak-u
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ār-i
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ida-u
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oko-u
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tuku-u
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mī-ru
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ki-u
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si-u
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ini-u
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sas-u
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utūr/s-u
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- 備考
- -i 語根(単音節、ナ行を除く)・長母音語根 (上一段を除く)、つまり、刺す型・移る型は、この時点で、子音語根由来の四段動詞と区別がなくなる。
③ 連体形の成立
- 終止形に -u を付加し、連体形が派生。終止形が二母音連続/長母音終わりのものには、子音 r が挿入される。
連体
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kaku-u
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āri-u
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idau-ru
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okou-ru
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tukū-ru
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mīru-u
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kiu-ru
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siu-ru
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iniu-ru
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