2021年5月30日日曜日

天保暦の月食法 (3) 方向角、地方食

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前回に引き続き、天保暦の月食法。

方向角、つまり、初虧時において最初にかけ始める箇所、食甚時においてかけている箇所、復円時において最後にかけ残っている箇所の方向を計算する。これはつまり、各時において月中心から見て地球影中心のある方向であり、この方向を上方(天頂方向)を基準に上下左右で表現したものである。

現在、暦要項などの日月食記事において記載されている方向角は、上方(天頂方向)を 0° とし、反時計回りに測った角(左方=90°, 下方=180°, 右方=270°)である。寛政暦(暦法新書(寛政))においては、初虧限東では下方を起点に時計回りの角、初虧限西では上方を起点に反時計回りの角、復円限東では上方を起点に時計回りの角、復円限西では下方を起点に反時計回りの角、として算出されていたが、当ブログの式では、暦要項の基準にあわせ、上方を起点に反時計回りの角に統一して計算しておいた。

天保暦(新法暦書)の式では、「下方を起点に時計回りの角」(左方=90°, 上方=180°, 右方=270°)に統一されている。寛政暦での説明の仕方とは異なってくるが、この基準にあわせて以下説明していくことにしよう。

2021年5月23日日曜日

暦要項の令和三年月食記事と、天保暦法で算出した月食とを比較してみる

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こんなことをすることにあまり意味はないと承知しているのだが、ふと思い立ったので計算してみる。

2021/5/26(水) には、皆既月食が起こる。暦要項などにどのような食となるのか計算して予報されている。これを、天保暦の月食法で計算するとどうなるのだろうか。

「意味がない」というのは、天保暦が現用されていた 1844~1873年から遠くはなれた現在において、賞味期限切れも甚だしい天保暦暦法を当てはめるのはフェアな態度ではないだろうから。

まあ、それはわかっているのだが、ちょっと興味本位でやってみることにした。

天保暦の月食法 (2) 食甚食分、初虧復円時刻、出入時食分

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前回より天保暦(新法暦書)の月食法について解説している。

前回までで、食甚時刻の算出までが完了した。今回は、食甚食分を算出と、初虧・復円時刻の算出を行う。また、帯出入時の食分の算出についても説明する。

寛政暦の月食法の相当箇所と、概ね同様の計算であるので、そちらも参考にされたい。

2021年5月16日日曜日

天保暦の月食法 (1) 実望・食甚時刻

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 前回まで、寛政暦の日月食法について説明してきた。今回からは、天保暦の日月食法について説明する。まずは月食法からだが、正直、天保暦の月食法は寛政暦の月食法と大差ない。寛政暦と計算方法が同じところについては、詳しくは説明しないので、寛政暦の月食法を読んでからこちらを読むことをお勧めする。

天保暦の月食法が、寛政暦の月食法から改められている点をいうと、

  • 寛政暦の月食法では、月出入時刻は、月離で記載されていた月出入時刻の算出法は用いず、太陽の入出時刻と等視されていたが、天保暦では、ちゃんと月出入時刻を使っている。
    • 地球影は、太陽の真裏に位置し、また月食が起きるときは、月は地球影の近傍にある。よって、太陽が西地平線にあって沈もうとしているとき、月/地球影は東地平線にあって昇ろうとしているはずで、太陽が東地平線にあって昇ろうとしているとき、月/地球影は西地平線にあって沈もうとしているはず。よって、月出入時刻のかわりに日入出時刻を代用できるわけである。
      が、これは、月/地球影の視差を無視している。地平視差(地半径差)は 1° 近くあり、地平線近くの月/地球影は、それだけ下方に沈み込んで見える。よって、月/地球影の出入は、太陽の入りより 5 min ほど遅く出、太陽の出より 5 min ほど早く入るはずである。
      寛政暦の月離の月出入時刻算出法は、どのみちこの効果を含めて算出していなかったが、天保暦の月離の月出入時刻算出法は、ちゃんと、この効果を含めて計算している。
  • 寛政暦では月の視半径は、月と地球の間の距離から算出していた。天保暦では、月の視半径独自のフーリエ級数展開式がある。
    また、地平線上の月を見るときより、天頂方向の月を見るときのほうが、観測者は地球の半径分だけ月に近いので、月の視半径が若干大きく見える (※)。この効果を計算に入れている。

ぐらいが、主なところか。

2021年5月9日日曜日

頒暦日月食記事との突合(寛政暦)

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前回までのところで、寛政暦における日月食の算出方法の説明を終えた。

今回は、記載した算出方法によって計算したものを、実際の寛政暦の頒暦の記載と突合する。


2021年5月3日月曜日

寛政暦の日食法 (8) 帯食の食分・方向角、地方食

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前回で、寛政暦の日食法の初虧・復円算出まで完了した。今回は、帯食の算出。あわせて、地方食(京都以外の地点での日食の算出)について。これが、寛政暦の日食法説明の最終回となる。