前回までのところで月の黄経の算出が完了した。今回は月の黄緯の算出について。
寛政暦での月の黄緯は、月の昇交点離角 \(F\) と、軌道傾斜角 \(i\)
に基づいて、月の緯度 \(\beta\) は、\(\sin \beta = \sin i \sin F\)
を算出するだけだったが、天保暦では、黄緯についても種々の不等項を置いて算出している。
黄道緯度汎数
[新法暦書巻二 推太陰黄道緯度用数]
最大黄白大距五度二十九分三十零秒五十五微
最小黄白大距四度九十九分九十一秒六十七微
黄白大距中数五度一十四分六十一秒一十一微
黄白大距半較一十四分六十九秒四十四微(即最大二均)
[新法暦書巻二 推太陰黄道緯度法]
求黄道緯度汎数「以半径為一率、実月距正交之正弦為二率、黄白大距中数之正弦為三率、求得四率為正弦、検表得黄道緯度汎数。実月距正交初宮至五宮為加、六宮至十一宮為減」
半径を以って一率と為し、実月距正交の正弦、二率と為し、黄白大距中数の正弦、三率と為し、求めて得る四率、正弦と為し、表を検じ黄道緯度汎数を得。実月距正交、初宮より五宮に至るは加と為し、六宮より十一宮に至るは減と為す。
\[ \begin{align}
\text{最大黄白大距} &= 5°.293055 &(= \text{黄白大距中数} + \text{黄白大距半較}) \\
\text{最小黄白大距} &= 4°.999167 &(= \text{黄白大距中数} - \text{黄白大距半較}) \\
\text{黄白大距中数} &= 5°.146111 \\
\text{黄白大距半較} &= 0°.146944 \\
\text{黄道緯度汎数} &= \sin^{-1} (\sin(\text{黄白大距中数}) \sin(\text{実月距正交}))
\end{align} \]
月の黄緯を \(\beta_m\)、軌道傾斜角(黄白大距)を \(i_m\)、月の黄経
\(\lambda_m\) の昇交点黄経 \(\Omega_m\) からの離角を \(F\) とするとき、
\(\sin
\beta_m = \sin i_m \sin F\)
である。これが、黄道緯度汎数であり、寛政暦の月黄緯の計算であればこれで終わりである(ただし、寛政暦では、昇交点真黄経・月の軌道傾斜角に不等を織り込むことにより、\(-
\sin(F - 2D)\)
に比例する「緯度の出差」ともいうべき不等が黄緯に自然に織り込まれて計算されてくるが、天保暦では、昇交点真黄経・月の軌道傾斜角にはそのような不等を織り込んでいないので、「緯度の出差」は別途計算することになる(緯度二均にあたる))。
なお、「黄白大距中数」は平均の月の軌道傾斜角であり、軌道傾斜角の不等(緯度二均)を織り込んだ場合の軌道傾斜角の値のレンジが「最小黄白大距」~「最大黄白大距」である。
太陰緯度一均
最大一均一十六秒六十七微
求一均「以半径為一率、三倍実月距正交之正弦為二率、最大一均為三率、求得四率為一均。三倍実月距正交初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、三倍実月距正交の正弦、二率と為し、最大一均、三率と為し、求めて得る四率、為一均。三倍実月距正交、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{一均} &= -0°.001667 \sin(3 \times \text{実月距正交})
\end{align} \]
\(\text{黄道緯度汎数} = \sin^{-1} (\sin(\text{黄白大距中数}) \sin(\text{実月距正交}))\) は、おおざっぱにいえば、\(+\sin F\) に比例する項であり、その 3 倍成分が一均である。
が、フーリエ級数展開すると、
\[ \begin{align}
\text{黄道緯度汎数} &=
\sin^{-1} (\sin(5°.146111) \sin F) \\
&\fallingdotseq +5°.144379 \sin
F - 0°.001731 \sin 3F + 0°.000002 \sin 5F
\end{align} \]
であり、緯度一均の
\(-0°.001667 \sin 3F\) は、黄道緯度汎数にすでに織り込まれている \(-0°.001731
\sin 3F\) を二重に計算しているものなんじゃないかという疑いがなくもない。
太陰緯度二均
求真月距日「置実月距日、加減十二均及十三均、得真月距日。倍之(満十二宮去之)為倍真月距日」
実月距日を置き、十二均及び十三均を加減し、真月距日を得。これを倍し(満十二宮これを去く)倍真月距日と為す。
求二均引数「置倍真月距日、減実月距正交(不足減者、加十二宮減之)、得二均引数」
倍真月距日を置き、減実月距正交(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、二均引数を得。
求二均「以半径為一率、二均引数之正弦為二率、黄白大距半較為三率、求得四率為二均。二均引数初宮至五宮為加、六宮至十一宮為減」
半径を以って一率と為し、二均引数の正弦、二率と為し、黄白大距半較、三率と為し、求めて得る四率、二均と為す。二均引数、初宮より五宮に至るは加と為し、六宮より十一宮に至るは減と為す。
\[ \begin{align}
\text{真月距日} &= \text{実月距日} + \text{太陰経度十二均} + \text{太陰経度十三均} \\
\text{二均引数} &= 2 \times \text{真月距日} - \text{実月距正交} \\
\text{二均} &= + \text{黄白大距半較} \sin(\text{二均引数})
\end{align} \]
緯度における出差。緯度の計算での最大の不等項である。寛政暦では黄緯に自然に織り込まれて算出されていた。
\(\text{二均}
= +0°.146944 \sin(2D - F) = -0°.146944 \sin(F - 2D)\)
太陰緯度三均
最大三均五秒五十六微
求三均引数「置実月距正交、減太陽引数(不足減者、加十二宮減之)、得三均引数」
実月距正交を置き、太陽引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、三均引数を得。
求三均「以半径為一率、三均引数之正弦為二率、最大三均為三率、求得四率為三均。三均引数初宮至五宮為加、六宮至十一宮為減」
半径を以って一率と為し、三均引数の正弦、二率と為し、最大三均、三率と為し、求めて得る四率、三均と為す。三均引数、初宮より五宮に至るは加と為し、六宮より十一宮に至るは減と為す。
\[ \begin{align}
\text{三均引数} &= \text{実月距正交} - \text{太陽引数} \\
\text{三均} &= +0°.000556 \sin(\text{三均引数})
\end{align} \]
緯度三均~六均は、\(F\) に、太陽の平均遠点角(太陽引数)\(l^\prime + 180°\)
や、月の平均遠点角(真引数) \(l + 180°\) を加減したものの sin
に比例する不等になっている。黄道緯度汎数に対する調整項と言える。
\(\text{三均}
= +0°.000556 \sin(F - (l^\prime + 180°)) = -0°.000556 \sin(F - l^\prime)\)
太陰緯度四均
最大四均四十八秒三十三微
求真引数「置白道実行、減最高実行(不足減者、加十二宮減之)、得真引数。倍之(満十二宮去之)為倍真引数。三之(満十二宮去之)為三倍真引数」
白道実行を置き、最高実行を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、真引数を得。これを倍し(満十二宮これを去く)倍真引数と為す。これを三し(満十二宮去之)三倍真引数と為す。
求四均引数「置実月距正交、減真引数(不足減者、加十二宮減之)、得四均引数」
実月距正交を置き、真引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、四均引数を得。
求四均「以半径為一率、四均引数之正弦為二率、最大四均為三率、求得四率為四均。四均引数初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、四均引数の正弦、二率と為し、最大四均、三率と為し、求めて得る四率、四均と為す。四均引数、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{真引数} &= \text{白道実行} - \text{最高実行} \\
\text{四均引数} &= \text{実月距正交} - \text{真引数} \\
\text{四均} &= -0°.004833 \sin(\text{四均引数})
\end{align} \]
\(\text{四均} = -0°.004833 \sin(F - (l + 180°)) = +0°.004833 \sin(F - l)\)
太陰緯度五均
最大五均六十六秒九十四微
求五均引数「置四均引数、減真引数(不足減者、加十二宮減之)、得五均引数」
四均引数を置き、真引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、五均引数を得。
求五均「以半径為一率、五均引数之正弦為二率、最大五均為三率、求得四率為五均。五均引数初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、五均引数の正弦、二率と為し、最大五均、三率と為し、求めて得る四率、五均と為す。五均引数、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{五均引数} &= \text{四均引数} - \text{真引数} &(=\text{実月距正交} - 2 \times \text{真引数}) \\
\text{五均} &= -0°.006694 \sin(\text{五均引数})
\end{align} \]
\(\text{五均} = -0°.006694 \sin(F - 2(l + 180°)) = -0°.006694 \sin(F - 2l)\)
太陰緯度六均
最大六均七秒五十微
求六均引数「置五均引数、減真引数(不足減者、加十二宮減之)、得六均引数」
五均引数を置き、真引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、六均引数を得。
求六均「以半径為一率、六均引数之正弦為二率、最大六均為三率、求得四率為六均。六均引数初宮至五宮為加、六宮至十一宮為減」
半径を以って一率と為し、六均引数の正弦、二率と為し、最大六均、三率と為し、求めて得る四率、六均と為す。六均引数、初宮より五宮に至るは加と為し、六宮より十一宮に至るは減と為す。
\[ \begin{align}
\text{六均引数} &= \text{五均引数} - \text{真引数} &(=\text{実月距正交} - 3 \times \text{真引数}) \\
\text{六均} &= +0°.000750 \sin(\text{六均引数})
\end{align} \]
\(\text{六均} = +0°.000750 \sin(F - 3(l + 180°)) = -0°.000750 \sin(F - 3l)\)
太陰緯度七均
最大七均二十三秒零六微
求七均引数「置二均引数、加太陽引数(満十二宮去之)、得七均引数」
二均引数を置き、太陽引数を加へ(満十二宮これを去く)、七均引数を得。
求七均「以半径為一率、七均引数之正弦為二率、最大七均為三率、求得四率為七均。七均引数初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、七均引数の正弦、二率と為し、最大七均、三率と為し、求めて得る四率、七均と為す。七均引数、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{七均引数} &= \text{二均引数} + \text{太陽引数} &(=2 \times \text{真月距日} - \text{実月距正交} + \text{太陽引数}) \\
\text{七均} &= -0°.002306 \sin(\text{七均引数})
\end{align} \]
緯度七均~十一均は、\(F - 2D\) に、太陽の平均遠点角(太陽引数)\(l^\prime +
180°\) や、月の平均遠点角(真引数) \(l + 180°\) を加減したものの sin
に比例する不等になっている。緯度の出差(二均)に対する調整項と言える。
\(\text{七均}
= -0°.002306 \sin((2D - F) + (l^\prime + 180°)) = -0°.002306 \sin(F - 2D -
l^\prime)\)
太陰緯度八均
最大八均一十零秒二十八微\(\text{八均} = -0°.001028 \sin((2D - F) - (l^\prime + 180°)) = -0°.001028 \sin(F - 2D + l^\prime)\)
求八均引数「置二均引数、減太陽引数(不足減者、加十二宮減之)、得八均引数」
二均引数を置き、太陽引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、八均引数を得。
求八均「以半径為一率、八均引数之正弦為二率、最大八均為三率、求得四率為八均。八均引数初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、八均引数の正弦、二率と為し、最大八均、三率と為し、求めて得る四率、八均と為す。八均引数、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{八均引数} &= \text{二均引数} - \text{太陽引数} &(=2 \times \text{真月距日} - \text{実月距正交} - \text{太陽引数}) \\
\text{八均} &= -0°.001028 \sin(\text{八均引数})
\end{align} \]
太陰緯度九均
最大九均六秒一十一微\(\text{九均} = -0°.000611 \sin((2D - F) + (l + 180°)) = -0°.000611 \sin(F - 2D - l)\)
求七均引数「置二均引数、加真引数(満十二宮去之)、得九均引数」
二均引数を置き、真引数を加へ(満十二宮これを去く)、九均引数を得。
求九均「以半径為一率、九均引数之正弦為二率、最大九均為三率、求得四率為九均。九均引数初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、九均引数の正弦、二率と為し、最大九均、三率と為し、求めて得る四率、九均と為す。九均引数、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{九均引数} &= \text{二均引数} + \text{真引数} &(=2 \times \text{真月距日} - \text{実月距正交} + \text{真引数}) \\
\text{九均} &= -0°.000611 \sin(\text{九均引数})
\end{align} \]
太陰緯度十均
最大十均四十一秒六十七微
求十均引数「置二均引数、減真引数(不足減者、加十二宮減之)、得十均引数」
二均引数を置き、真引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、十均引数を得。
求十均「以半径為一率、十均引数之正弦為二率、最大十均為三率、求得四率為十均。十均引数初宮至五宮為加、六宮至十一宮為減」
半径を以って一率と為し、十均引数の正弦、二率と為し、最大十均、三率と為し、求めて得る四率、十均と為す。十均引数、初宮より五宮に至るは加と為し、六宮より十一宮に至るは減と為す。
\[ \begin{align}
\text{十均引数} &= \text{二均引数} - \text{真引数} &(=2 \times \text{真月距日} - \text{実月距正交} - \text{真引数}) \\
\text{十均} &= +0°.004167 \sin(\text{十均引数})
\end{align} \]
\(\text{十均} = +0°.004167 \sin((2D - F) - (l + 180°)) = +0°.004167
\sin(F - 2D + l)\)
太陰緯度十一均
最大十一均一十六秒六十七微
求十一均引数「置十均引数、減真引数(不足減者、加十二宮減之)、得十一均引数」
十均引数を置き、真引数を減じ(減に足らざれば、十二宮を加へこれを減ず)、十一均引数を得。
求十一均「以半径為一率、十一均引数之正弦為二率、最大十一均為三率、求得四率為十一均。十一均引数初宮至五宮為減、六宮至十一宮為加」
半径を以って一率と為し、十一均引数の正弦、二率と為し、最大十一均、三率と為し、求めて得る四率、十一均と為す。十一均引数、初宮より五宮に至るは減と為し、六宮より十一宮に至るは加と為す。
\[ \begin{align}
\text{十一均引数} &= \text{十均引数} - \text{真引数} &(=2 \times \text{真月距日} - \text{実月距正交} - 2 \times \text{真引数}) \\
\text{十一均} &= -0°.001667 \sin(\text{十一均引数})
\end{align} \]
\(\text{十一均} = -0°.001667 \sin((2D - F) - 2(l + 180°)) = +0°.001667
\sin(F - 2D + 2l)\)
太陰黄道緯度
求太陰黄道緯度「自黄道緯度汎数及一均至十一均、加号相併為加均、減号相併為減均。両均数相減、得太陰黄道緯度。加数大為北、減数大為南」
黄道緯度汎数及び一均より十一均に至る、加号相併せ加均と為し、減号相併せ減均と為す。両均数、相減じ、太陰黄道緯度を得。加数大は北と為し、減数大は南と為す。
\[ \begin{align}
\text{太陰黄道緯度} = &\text{黄道緯度汎数} \\
& + \text{一均} + \text{二均} + \text{三均} + \text{四均} + \text{五均} + \text{六均} \\
& + \text{七均} + \text{八均} + \text{九均} + \text{十均} + \text{十一均}
\end{align} \]
黄道緯度汎数に、一均~十一均を加減して、太陰黄道緯度を得る。
水路部式との比較
天保暦の月緯度算出と、水路部式とを比較してみる。
No. | 水路部式 [水路部式解釈] |
天保均数 | 天保振幅 |
---|---|---|---|
1 |
\(+5°.1282 \sin(236°.231 + 4832°.0202t + B)\) [\(+5.1282 \sin(F + 補正項)\)] |
汎数 | \(+5°.146111\) |
2 |
\(+0°.2806 \sin(215°.147 + 9604°.0088t)\) [\(+0.2806 \sin(F + l)\)] |
||
3 |
\(+0°.2777 \sin(77°.316 + 60°.0316t)\) [\(-0.2777 \sin(F - l)\)] |
四均 | \(+0°.004833\) |
4 |
\(+0°.1732 \sin(4°.563 - 4073°.322t)\) [\(-0.1732 \sin(F - 2D)\)] |
二均 | \(-0°.146944\) |
5 |
\(+0°.0554 \sin(308°.98 + 8965°.374t)\) [\(+0.0554 \sin(F + 2D - l)\)] |
||
6 |
\(+0°.0463 \sin(343°.48 + 698°.667t)\) [\(-0.0463 \sin(F - 2D + l)\)] |
十均 | \(+0°.004167\) |
7 |
\(+0°.0326 \sin(287°.90 + 13737°.362t)\) [\(+0.0326 \sin(F + 2D)\)] |
||
8 |
\(+0°.0172 \sin(194°.06 + 14375°.997t)\) [\(+0.0172 \sin(F + 2l)\)] |
||
9 |
\(+0°.0033 \sin(25°.6 - 8845°.31t)\) [\(-0.0033 \sin(F - 2D - l)\)] |
九均 | \(-0°.000611\) |
10 |
\(+0°.0088 \sin(98°.4 - 4711°.96t)\) [\(-0.0088 \sin(F - 2l)\)] |
五均 | \(-0°.006944\) |
11 |
\(+0°.0082 \sin(1°.1 - 3713°.33t)\) [\(-0.0082 \sin(F - 2D + l^\prime)\)] |
八均 | \(-0°.001028\) |
12 |
\(+0°.0043 \sin(322°.4 + 5470°.66t)\) [\(-0.0043 \sin(F - 2D + 2l)\)] |
十一均 | \(+0°.001667\) |
13 |
\(+0°.0042 \sin(266°.8 + 18509°.35t)\) [\(+0.0042 \sin(F + 2D + l)\)] |
||
14 |
\(+0°.0034 \sin(188°.0 - 4433°.31t)\) [\(+0.0034 \sin(F - 2D - l^\prime)\)] |
七均 | \(-0°.002306\) |
15 |
\(+0°.0025 \sin(312°.5 + 8605°.38t)\) [\(+0.0025 \sin(F + 2D - l - l^\prime)\)] |
||
16 |
\(+0°.0022 \sin(291°.4 + 13377°.37t)\) [\(+0.0022 \sin(F + 2D - l^\prime)\)] |
||
17 |
\(+0°.0021 \sin(340°.0 + 1058°.66t)\) [\(-0.0021 \sin(F - 2D + l + l^\prime)\)] |
||
18 |
\(+0°.0019 \sin(218°.6 + 9244°.02t)\) [\(+0.0019 \sin(F + l - l^\prime)\)] |
||
19 |
\(+0°.0018 \sin(291°.8 - 8206°.68t)\) [\(-0.0018 \sin(F - 4D + l)\)] |
||
20 |
\(+0°.0018 \sin(52°.8 + 5192°.01t)\) [\(-0.0018 \sin(F + l)\)] |
||
21 |
\(+0°.0017 \sin(168°.7 + 14496°.06t)\) [\(-0.0017 \sin(3F)\)] |
一均 | \(-0°.001667\) |
22 |
\(+0°.0016 \sin(73°.8 + 420°.02t)\) [\(-0.0016 \sin(F - l + l^\prime)\)] |
||
23 |
\(+0°.0015 \sin(262°.1 + 9284°.69t)\) [\(-0.0015 \sin(F + D)\)] |
||
24 |
\(+0°.0015 \sin(31°.7 + 9964°.00t)\) [\(-0.0015 \sin(F + l + l^\prime)\)] |
||
25 |
\(+0°.0014 \sin(260°.8 - 299°.96t)\) [\(+0.0014 \sin(F - l - l^\prime)\)] |
||
26 |
\(+0°.0013 \sin(239°.7 + 4472°.03t)\) [\(+0.0013 \sin(F - l^\prime)\)] |
三均 | \(-0°.000556\) |
27 |
\(+0°.0013 \sin(30°.4 + 379°.35t)\) [\(+0.0013 \sin(F - D)\)] |
||
28 |
\(+0°.0012 \sin(304°.9 + 4812°.68t)\) [\(-0.0012 \sin(\lambda_m)\)] |
||
29 |
\(+0°.0012 \sin(12°.4 - 4851°.36t)\) [\(+0.0012 \sin(\lambda_m - 2F)\)] |
||
30 |
\(+0°.0011 \sin(173°.0 + 19147°.99t)\) [\(+0.0011 \sin(F + 3l)\)] |
||
31 |
\(+0°.0010 \sin(312°.9 - 12978°.66t)\) [\(-0.0010 \sin(F - 4D)\)] |
||
32 |
\(+0°.0008 \sin(1°. + 17870°.7t)\) [\(+0.0008 \sin(F + 4D - l)\)] |
||
33 |
\(+0°.0008 \sin(190°. + 9724°.1t)\) [\(-0.0008 \sin(3F - l)\)] |
||
34 |
\(+0°.0007 \sin(22°. + 13098°.7t)\) [\(+0.0007 \sin(F + 4D - 2l)\)] |
||
35 |
\(+0°.0006 \sin(117°. + 5590°.7t)\) [\(-0.0006 \sin(3F - 2D)\)] |
||
36 |
\(+0°.0006 \sin(47°. - 13617°.3t)\) [\(-0.0006 \sin(F - 2D - 2l)\)] |
||
37 |
\(+0°.0005 \sin(22°. - 8485°.3t)\) [\(-0.0005 \sin(F - 2D -l + l^\prime)\)] |
||
38 |
\(+0°.0005 \sin(150°. + 4193°.4t)\) [\(-0.0005 \sin(F + 2D - 2l)\)] |
||
39 |
\(+0°.0004 \sin(119°. - 9483°.9t)\) [\(-0.0004 \sin(F - 3l)\)] |
六均 | \(-0°.000750\) |
40 |
\(+0°.0004 \sin(246°. + 23281°.3t)\) [\(+0.0004 \sin(F + 2D + 2l)\)] |
||
41 |
\(+0°.0004 \sin(301°. + 10242°.6t)\) [\(-0.0004 \sin(F - 2D + 3l)\)] |
||
42 |
\(+0°.0004 \sin(126°. + 9325°.4t)\) [\(-0.0004 \sin(F + 2D - l + l^\prime)\)] |
||
43 |
\(+0°.0004 \sin(104°. + 14097°.4t)\) [\(-0.0004 \sin(F + 2D + l^\prime)\)] |
||
44 |
\(+0°.0003 \sin(340°. + 22642°.7t)\) [\(+0.0003 \sin(F + 4D)\)] |
||
45 |
\(+0°.0003 \sin(270°. + 18149°.4t)\) [\(+0.0003 \sin(F + 2D + l - l^\prime)\)] |
||
46 |
\(+0°.0003 \sin(358°. - 3353°.3t)\) [\(-0.0003 \sin(F - 2D + 2l^\prime)\)] |
||
47 |
\(+0°.0003 \sin(148°. + 19268°.0t)\) [\(-0.0003 \sin(3F + l)\)] |
正直、あまり合致している感はない。
まあ単純比較はできないのだが。天保暦では、月黄経、太陽黄経は真黄経を用いているのに対し、水路部式では平均黄経を用いており、平均黄経と真黄経とで出る差違は別の不等として切り出している。汎数
\(\sin F\) について、月黄経に真黄経を用いるとすれば、
\[ \begin{align}
\text{汎数}
&\propto \sin (F + 2e \sin l) \\
&= \sin F \cos(2e \sin l) + \cos
F \sin(2e \sin l) \\
&\fallingdotseq \sin F + 2e \cos F \sin l \\
&=
\sin F + e \sin(F + l) - e \sin(F - l)
\end{align} \]
となり、No. 2,
3 の \(\sin (F + l), \sin (F - l)\)
の項が出てくるわけである。よって天保暦ではこれは汎数に含まれて算出されるわけだから別には切り出されていない。
水路部式には \(F + 2D\) ベースの不等が含まれているようだ。天保暦では \(F\)
ベース、\(F - 2D\) ベースのものは含まれているが、\(F + 2D\)
ベースのものはない。
天保一均 \(-0°.001667 \sin 3F\) は、No. 21 \(-0.0017 \sin(3F)\)
に対応させてはいるが、これは、汎数、
\[ \begin{align}
\text{黄道緯度汎数}
&= \sin^{-1} (\sin(5°.146111) \sin F) \\
&\fallingdotseq
+5°.144379 \sin F - 0°.001731 \sin 3F + 0°.000002 \sin 5F
\end{align}
\]
に包含されているように思われるので、やはり二重計上なんじゃないかという気がする。
月の黄経・黄緯が得られたところで、次回は赤経・赤緯への変換について。
また、黄経・黄緯で「左右・上下」の座標が得られたわけだが、三次元的位置を確定するための残りの座標「前後」の位置、つまり、月と地球との間の距離を示す「地半径差」(地平視差
horizontal parallax)の算出について。
[参考文献]
渋川 景祐; 足立 信頭「新法暦書」 国立公文書館デジタルアーカイブ蔵
渋川 景祐; 足立 信行「新法暦書続編」 国立公文書館デジタルアーカイブ蔵
長沢 工 (1981, 1985)「天体の位置計算 増補版」, 地人書館 ISBN-9784805202258
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